過ぎし日と来たる日

ル・ピュイの道や日々のあれこれ

Day 5-2

前回の続きです🤚

 

ナスビナルを出てしばらく舗道を歩くと横道に外れていきます。そこから緩やかに登りが続きます。歩きながら街で買ったパン・オ・ショコラをむしゃむしゃ😋サックリ食感でとてもおいしいです。

ちなみに、パン・オ・ショコラは南西部ではショコラティンと呼びます。途中で出会った誰かが冗談で私に、それを買うときショコラティンと言えば安くしてくれるかもよと教えてくれましたが、それは見事にウソでした😆

 

ナスビナルの標高がだいたい1170mで、これからル・ピュイの道の最高地点1370mを超えてオーブラックへと向かいます⛰️

なんの木かな🧐

 

この辺りからの景色は圧巻です。

一帯の牧草地の斜面にいる牛たちと一緒に歩いたりします。

石垣

牛さん優先🐮

道もフンだらけなのでなんとか避けて進みます。それにしても癒されますねー🥰

きっと風が強かったり雨が降ったりしたら大変な道なんでしょうが、今日は大変歩きやすいです。アップダウンもあまり気になりません。

RPGの世界のようです

牧草が緑色の時期はもっとキレイなんでしょうねー。

途中、背の高いおじさんに話しかけられたので少し一緒に歩きました。彼は北部の町ダンケルク(Dunkerque)から、他の2人の友人と毎年ちょっとずつ歩きに来ているそうです。

 

いつの間にか登りが終わり、また緩やかに降っていきます。と、前方に派手な色のウェアを着た10人ほどの集団が😯あいさつすると、アジア人でした。女性が多かったですが、彼女たちも私を見てアジア人と気づいたのか、ワーっとあいさつしてくれました😄

彼女たちはシンガポールから来たそうで、引率のヨーロッパ人が2人ついています。そういえば、オーモン・オーブラックでローラと話していたとき、シンガポールのPuriestの団体を見たと言っていましたが、彼女たちのことですね。Puriestとはピューリタンのことでしょうか?

 

彼女たちを追い抜いて、しばらく降りていくとオーブラックの村に到着です。小さな村ですが、観光客で賑わっているようで、お昼すぎですがレストランはどこもいっぱいです😯

一応、ここが今日の目的地だったので目当てにしていたGîteに向かいます。村の真ん中に目立つ塔があり、そこがGîteになっているようです。「イギリス人の塔」という名前なのですが、なぜ「イギリス人」なのでしょうか🧐

 

扉が…😨

閉まっていますね😅張り紙が貼ってあります。

「8月15日は祝日のためお休みします」

おいおい😰公共の宿だから開いているだろうと思ったのに。

ここにはあと高いChambre d'Hoteと、村から出て少し戻ったところにしかGîteはありません。広場に腰掛けてしばし考えます🙄

まだ時間もあるし、次のサンシェリーまで行くしかないなと考え、また出発することにしました。少し足が疲れていましたが、まだまだ元気でした。

 

ここからは25km先のサン・コーム・ドルト(Saint-Côme-d'Olt)まで急な降り道が連続します。足への負担はもちろん、膝や腰にも来るので油断できません。村を出てしばらくすると、さっそく森の中を降っていきます。

石がゴロゴロ

足元の岩を踏むと捻挫する危険があるので、なるべく土の上を歩くよう心掛けます。しかし、急な箇所もけっこうあるし、なんだかんだで疲れもあって踏ん張りが効かなかったり😰サンシェリーまで8km。なんとか耐えるしかありません。

暑さが抑えめだったのがまだ救いでしたが、もう必死です😵‍💫途中の岩場に十字架があったことしか覚えていません。15時すぎ、ようやく村が見えてきたときはホッとしました😌が、本当の地獄はここからです。

気がついたら☀️に

 

とりあえず、もともと前日に予約してあった"Gîte Saint-Andre"という宿に向かってみます。オーナーが出迎えてくれて、まずは自分の名前と2日前に予約をキャンセルしたことを詫び、改めて今日空いてるかを聞きます。しかし、ごめんと謝られました。表情が優しい方だったので、なおさら泊まれれば良かったなと思いましたが仕方ありません。

 

次のところに行く前に、観光案内所があったので宿が紹介できないか聞くも、できないと断られてしまいました。そもそも私も何もしていなかったわけではなく、宿泊予約のメールを方々に送ってはいたのです📧しかし、満室か返信なしばかりでどうしようもなかったんですよね😰これも計画を変更して一度全てキャンセルしてしまったせいと、この日が祝日で前後にバカンスを取っている人で宿泊施設が埋まっているせいでした😣

私はガイドブックも持っていなかったので、Gronze.comに載っているところか、手当たり次第に探すしかありませんでした。個人的には、道の険しさと宿に関してのこの辺の敷居の高さがル・ピュイの道を歩くのをさらに難しくしていると感じます。

 

もうどこに行ってもベッドがなく、ホテルすら空いていません。32km歩いてきてこの絶望感たるや😫💨💨

と、とあるGîteに行ってオーナーと話していると、中からディディエが😭彼は無事着いて、ここに投宿しているようです。ディディエはオーナーと相談してなんとか泊まれる所を探してくれました。

それでも結局見つからなかったのですが、オーナーが外でもいいかと聞くのでよくわからないけど、一晩休めるならどこでもいいと言ったら、ファニという人がテントを持っているから17時半になったら彼女と会ってと言われました。

今朝たまたまファニという子に会ったので、彼女もここまで来てどこかの宿に泊まるから、そのテントを貸してもらえるのかと思いました。とりあえず、あと1時間ちょっと。不安でも待ち続けるしかありません。荷物が異常に重く感じます😩

 

もう歩きたくなかったので、村の広場のバーに腰を下ろしてコーラを頼みます🍹本当はビールにしたかったのですが、事情がうまく飲みこめず喜ぶ気にもなれませんでした。他のお客さんはワイワイして楽しそうです。このときは本当に心細かった😰

ファニが来るにしてもどこに行けばいいかもわからないし。とりあえず、明日以降の宿を探そうとメールを送ったりします。後悔やら不安やらいろんなことが頭をよぎります。コーラの瓶に小さなハチが数匹飛んで寄り添ってくれました😢

 

17時半になり席を立つと、広場にディディエがやってきました。「ファニはどうした」と聞くので「わからない」と答えると、「じゃあ行こうか」と言います。私にはまだよくわかりません。その前に、「明日の宿は?」と聞かれ、「まだだよ」と答えると、どこまで行きたいか問われ、「サン・コーム・ドルトかその先のエスパリオン(Espalion)かな」と答えるとエスパリオンにある宿の1つに電話をかけ、空いていたので予約を取ってくれました😢

そのとき1組の夫婦が声をかけてきてくれます。ディディエが彼らを知っていたので私の状況を説明すると、ここを歩いている人は誰しもが君を助けてくれるから、なんでも遠慮せずに頼りなさいと教えてくれました。ディディエも頷いています。私はふと2日前のダミアンを思い出しました。彼は特別だと思っていたけど、そうではないらしいのです。

このような場合、日本では、東京では、どうだろう。とてもじゃないけど、誰かが助けてくれるなんて想像できません。誰かしらいるかもしれないけど、きっと多くの人は見て見ぬふりをするのではないでしょうか。実際、私もそうです。しかし、ここでは他人を助けるのは当たり前だし、重要だと言うのです😢

 

前にも書きましたが、どん底にいるとき、ほんの些細なことでも他人から支えは救いになるものです。

Saint-Chély-d'Aubrac

 

夫婦に感謝して別れ、ディディエに付いていきます。そこはキャンプ場です。誰かを探して奥の方に行くと、ひとりの女性がボードに挟んだ紙に何かを書いています。ディディエが事情を説明すると、彼女は笑顔でようこそと言い、そばに張ってあるテントを指さして、ここを使っていいからねと言いました。彼女がファニです。そこでようやく状況を理解しました。

キャンプ場

このファニは村でGîteを経営するかたわら、キャンプ場も管理しているのでした。村外れにあるこのキャンプ場には、キャンピングカーで来ている家族やハイカーらしきカップルなど、たくさんの人が利用しています。その受付を彼女がしているのです。テントも自前で持っていて、あらかじめ張ってくれているのでなんの準備も要りません。

私はようやく安心できました。それを見たファニが笑顔で「幸せ?」と問うてきました。それはもう。これ以上のものは望めません😭

 

日頃から贅沢に慣れきっているのに、あるとき最小限のものすらも望めなくなると、その最小限のもののありがたみや大切さがよくわかります。ついさっきまで途方に暮れていたのに、まるで全てを得た気分です。

ディディエはじゃあと帰って行こうとするので、しっかりお礼を言いました。感謝してもしきれません。君の笑顔が好きだと言い、宿に帰って行きました🥲

 

このキャンプ場にはトイレも熱いお湯の出るシャワーもあります。もう本当に天国でしょうか。

シャワーから出てからよほどスッキリした顔をしていたのか、そこにいた男性が「最高じゃないかー」と言ってきました☺️泣きそうになります。

 

まだ明るいので少し村を見てまわりました。

先ほどまでこんな村、もういたくないと思っていたのに、不思議なもので、今日の全てはこのためにあったのかと思えるほどなにもかもが美しく見えてきます✨

村の広場

教会

小さいけれど厳かな雰囲気の教会です。

Pont des Pélerins(巡礼者の橋)

 

さすがに外は夜冷えるのでダウンジャケットと寝袋を準備します。毛布は準備してありました。夕飯は日本から持ってきた羊羹です。甘さが染み渡りますね🎵

 

眠る前、一日のことを振り返りました。まさに地獄から天国のような一日。振り返って、ものすごく神を信じてみたくなりました。しかし、その神とはいわゆる「神」ではなくて、人間ひとりひとりに宿る「良心」です。自分ではどうにもならない問題を、彼らが受け継いできた良心と良き精神によって救われました。

私は彼らひとりひとりの良心のあり方を受け継ぎたいと思ったのです。