過ぎし日と来たる日

ル・ピュイの道や日々のあれこれ

パリの街歩き

自分は少し足が悪いため、ランニングの代わりによくウォーキングをしています。東京の混んでいる電車にはあまり乗りたくないので、よほど遠くない限りは歩いて目的地に向かうことも多いです。歩いていると思わぬ発見をすることもありますよね。

 

しかし、最近ふと気づいたのは、東京って「〜跡」みたいな所ばかりなんですよね。建物やランドマークが現存せず、立看板で小さく説明が書かれているだけなんです。もちろん様々な事情があるのは承知の上で、それでももっとどうにかしてほしかったと残念に思うわけです😢

なぜ残念に思うかというと、在りし日のその場所の様子を想像しづらいからです。知識を増やせば想像力自体は増すかもしれません。しかしながら、何もないところから想像せよという要求ほど無茶なことはないでしょう。

 

Institut de France, Paris

ところ変わってパリ🇫🇷

私はパリに3度、合わせて2週間ほど滞在したことことがあります。1度目は大学2年の夏。スペインでの夏季プログラムの帰りに5日ほど。

2度目の滞在は暮らすように過ごしたいと思い、1週間いました。このときはイタリアからドイツにかけて周遊したのですが、一番の目的地はパリでした。というのも、ある2冊の本を読んで、影響され、そこに出てくる場所を見てみたいと思ったからです。

 

1冊目は鈴木道彦先生の『異郷の季節』

 

もう1冊は大島洋氏の『アジェのパリ』

 

この2冊はとてもおもしろいですよ☺️

鈴木道彦氏はフランス文学者で、研究を目的に2度パリに長期滞在をしているのですが、この本はその滞在記と言ってよいでしょう。

1954年から58年。1968年から69年。これらの年は前者がアルジェリア独立戦争、後者がいわゆるパリの五月革命にあたる時期で、まさに時代の証言者なのです。

 

左岸の6区に住み、あちこちの路地や建物が登場するのですが、これらはキレイにこそなれど、現存しているんですよね。マビヨン街やギザルド街、あるいはソルボンヌ。これら5区から6区にかけての、いわゆるカルチェ・ラタンという地区は私にとっては憧れの場所でした。

Sorbonne

また、著者が毎日のように訪れたBN、つまり、国立図書館での逸話が本当におもしろいんですよ😊さすがパリだけあって、いろんな人がいます。ボーヴォワールの席の話や、20年以上同じ席に座る老人の話など、不思議な逸話もあり、嫌でも興味を掻き立てられます。

BNは最近改修工事が終わり、同じ場所にBNFリシュリューという名でオープンしています。入場無料です。

BNF Richelieu

 

もう1冊の『アジェのパリ』は、約1世紀前の旅芸人兼写真家のウジェーヌ・アジェの撮った写真を手がかりに、日本人写真家が通り名から場所を探して現在と比べる、というような内容です。これも本当におもしろい😊

 

私がアジェを知ったのはたしか、ヴァルター・ベンヤミンの「写真小史」という文章の中だったと思います。おもしろいのが、通りや建物の写真でも人物をその中に写さないアジェの写真をベンヤミンは「殺人現場」に喩えているんですね。アジェには人物を写した写真もあるんですが、現在のパリの人の多さを想像すると、誰も写っていないアジェの写真は奇妙なものに思えるんです。

で、アジェの撮った通りや建物は少し変化しているものもあるけれど、ほとんどそのまま残っているんですよ。これは、なんでもないことのようだけど、最初に言ったようにものすごく大事だと思うんです。なぜなら、時代は違えど、今そこを人が歩いているという、それとほぼ同じ光景がかつてもあったんだなと想像できるからですね。

もちろん、その想像が歴史的に正しいかどうかはわかりません。しかし、楽しいじゃないですか。一瞬でもそう感じるのって。私にとってはそういう瞬間が大事なんですよね😊それでひたすらぐるぐるパリを歩き回りました。

2区、ボールガール通りとクレリー通りの間

 

正直、街としてのパリを好きかと問われたら、んー😐って感じですが、歩くのがこれほど楽しい街は他にない気がします。もちろん、観光地や美術館を巡るのも楽しいですが、一度、自分ならではの目的でパリを散策してみてはいかがでしょうか😊